研究内容

鈴木研究室で現在行なわれている研究について、いくつかご紹介いたします。


低速衝撃負荷を受けるCFRP積層板の力学特性

炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics, CFRP)は、一般的に用いられる金属と比較すると、丈夫で軽いことから、航空宇宙分野など軽量化の要請の大きな分野で長く用いられてきた。また最近では、車体の軽量化による燃費向上、そして搭乗者の衝突安全性能の向上などを目指して自動車産業分野においても注目されている。今後、既存の構造材料を代替し、CFRPが一般に普及していくためには、その力学特性をこれまで以上に詳しく調べていく必要がある。その中でも、低速衝撃負荷を受けるCFRP積層材の衝撃エネルギー吸収特性の評価及びその向上を図る工夫を考案していくことには大きな意義があるものと考える。

そこで本研究では、様々な条件で作成したCFRP積層板について、落錘型の低速衝撃負荷試験装置を用いて、衝撃エネルギー吸収特性と衝撃負荷直後の力学挙動特性を実験的に評価する。

落錘型の低速衝撃負荷試験装置
落錘型の低速衝撃負荷試験装置


ケナフ繊維強化ポリ乳酸の力学的特性に関する研究

トウモロコシなどの天然植物を原料とするポリ乳酸(PLA)は、環境負荷を抑える物質として近年脚光を浴びている。PLAは現在、自動車、医療、電子機器筐体など様々な分野で利用され、今後さらに用途の拡大が期待されている。しかし、PLAには汎用プラスチックに比べ機械的特性や耐熱性が劣るという欠点がある。そこで、PLAに植物靭皮繊維であるケナフ短繊維を混ぜ、複合材化することで、機械的特性を向上させるという取り組みが行われ ている。

本研究では、粉末X線回折(XRD)によってPLAの結晶化度を測定し、成形温度条件の違いによって結晶化の進行や板材の透明性にどのような変化が現れるかを調べ、最適な成形条件を決定する。そして、ケナフ繊維をPLAに含有することで、機械的特性にどのような違いが表われるかを調べる。その上でケナフ繊維に表面処理を施すことで、ケナフ繊維/PLA界面の接合性を向上させ、複合材の機械的特性がどのように変化するのかを調べる。

ケナフ短繊維強化PLA複合材の静的引張試験
ケナフ繊維強化ポリ乳酸複合材の静的引張試験


外力による下顎骨骨折部位の検討

下顎骨骨折は顔面骨折のなかでも発症頻度が高い。その大部分が外傷性骨折であり、そのうちの約半数が交通事故によって発生し、他に殴打、転倒・転落、スポーツなどによるものも多い。その中で、骨折の原因のひとつであるスポーツは、他の原因とは異なり、医療を施行する側からの積極的な働き掛けによって、十分に予防効果をあげることの可能な領域であると考えられる。よって下顎骨の発生機序の解明は、外傷の予防あるいは治療法などの一助になると考えられる。

そこで本研究では、歯科用コーンビームCT画像により下顎骨の解析モデルを作成し、有限要素法(FEM)解析により外力の負荷された場合の下顎骨骨折の発生機序を数値シミュレーションから検討することを目的とする。

なお、本研究は日本歯科大学 生命歯学部の河合 泰輔 准教授、浅海 利恵子 講師と共同で行なっている。

FEMによる顎骨の外力負荷後の相当応力分布
FEM解析による顎骨の外力負荷後の相当応力分布


メタルコアの形態の違いによる歯根部のFEM応力解析

歯科治療において歯の神経を除去した際、そのままではクラウン(被せ物、差し歯)を被せられないことがあり、その場合には人工の土台(コア)により欠損部を補うことが必要である。しかしコアを入れた後に歯根が破折することがある。このような歯の破折が起こらないようなコアの形状を考えることが、より安全な歯科治療には欠かせない。

そこで本研究では、有限要素法(FEM)を用いて、様々な症例に対して最適なコア形状を数値シミュレーションを行ない、治療に生かすことを目指す。

なお、本研究は日本歯科大学 生命歯学部の河合 泰輔 准教授、浅海 利恵子 講師と共同で行なっている。

FEM解析によるコアを装着した下顎第一大臼歯部の相当応力
FEM解析によるコアを装着した下顎第一大臼歯部の相当応力分布


インプラント体が下顎骨へ与える応力のFEM解析

近年、歯の治療法の1つとしてインプラント治療が注目されおり、治療技術も向上してきた。しかし、治療後におけるインプラントの脱落や二次的な感染による炎症などが多く報告されている。これは、歯根膜という歯と顎骨との間で緩衝材の役割をする線維性組織がインプラントにはないことから、咬み合った際の力が直接顎骨に影響するためである。

そこで本研究では、インプラント埋入された顎骨が咬合時において受ける応力と変位量とを有限要素法(FEM)により数値解析する。その結果から、インプラントが顎骨に及ぼす負担の度合いについて定量的に考察することを目的とする。

なお、本研究は日本歯科大学 生命歯学部の河合 泰輔 准教授、浅海 利恵子 講師と共同で行なっている。

FEM解析による下顎へ埋入したインプラント体の相当応力分布
FEM解析による下顎へ埋入したインプラント体の相当応力分布